おむえす

脳に栄養を

シュビングの傾聴

シュビング夫人をご存知であろうか。

 

なぜかあまり有名でないのだが、ゲルトルート・シュビングはスイスの看護師で、フロイト派の精神分析を学んだ。

著書「精神病者魂への道」に記されたシュビングの手技は「シュビング的接近」と呼ばれ、治療者がクライエントと共にどうあるのかを示している。

 

シュビング的接近は、シュビングが緊張症の少女アリスのベッドに毎日30分間、ベッドの側に静かに佇んだという「アリスの症例」に現れている。

アリスは保護室に入院しており、外界との接触を遮断していた。

毛布に隠れ、目も口も閉じたままであり、人工栄養によって命を繋いでいた。

シュビングがベッドに佇み始めて3,4日過ぎたころ、アリスは用心深く毛布から顔を出した。

シュビングは受け身の姿勢を崩さず、そっと見守った。

その翌日、アリスは口を開いた。

 

「あなたは私のお姉さんなの?」

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笑顔のメリットとデメリット

「男の笑顔、女性の自信でモテ度は下がる」とメンタリストDaigoさんは言われていた。

聴いてみるとなるほど納得な内容である。

daigoblog.jp

 

女は愛嬌、男は度胸なんてことわざを思い出してしまうのだが、ジェンダー関連の方が反応してしまうかもしれない。

 

日本人は愛想良く相手に嫌われないように生きようとする。

おべんちゃらを使い、ゴマをすり、ニコニコと笑っていれば、難なく生きていけるという不文律がある。

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メンタルヘルス・ファーストエイド

オーストラリアではメンタルヘルスに問題を抱える人に対して、一般市民が受講できる12時間の講習を行っている。

これはメンタルヘルス・ファーストエイドと呼ばれ、心の問題に対する応急処置となっている。

心理的危機が生じたときに、専門家にかかる前にどのような支援を行うか、どのように行動すべきかを示した非常に有効なツールと言える。

 

日本でも導入は進んでおり、メンタルヘルス・ファーストエイドの日本版が「こころの処置応急マニュアル」としてMental Helth First Aid Japan が普及・啓蒙を行っている。

こころの応急処置マニュアル | Mental Health First Aid Japan

 

福岡県北九州市では、九州大学との連携のもと、市民に対して広報しており、九州大学の加藤隆弘先生と岩手医科大学の大塚耕太郎教授らは職員に対する短時間のツールを開発し、パイロット研究で効果を得たと発表した。

こころの応急対応 (メンタルヘルス・ファーストエイド)の紹介 | 北九州市 いのちとこころの情報サイト

 

オーストラリアでの対応原則は次の5つである。

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催眠術は使えますかという質問へのお返事

心理の勉強をし始めたころから、時折尋ねられることがある。

このブログでもメールで質問があったので、私見を述べたいと思う。

その質問とは、

 

「催眠術は使えますか?」

 

である。

 

実は非常に難しい質問であり、内容によってはYESともNOともいえる。

 

なぜか。

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神経発達障害群の成長に見る社会生活の障害

神経発達障害群の中で、旧来アスペルガー障害と呼ばれていた疾患がある。

アスペルガー障害はドラマや映画での啓もう及び、KYブームの中で広く知れ渡っているだろう。

社会性の障害としてとらえると理解しやすい。

アスペルガーの心性としては、強いこだわりや場の状況を読めないことなど、他者理解に問題がある。

しかし、これだけで本人が困ることは少ない。

社会集団に属するときに問題が露見する。

社会構成員として生活をすると、他のマジョリティーと馴染めないのである。

結果として、マジョリティーを対象にした業務や協調の世界から迫害を受けやすく、精神症状を惹起したり、社会生活に不適応を起こしたりする。

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いつも心にパラソルを

パラソルと言いつつもアンブレラの話。

 

冬の雨は鬱屈としている。

雪になりそうな予感もする冷えた雨。

どんよりと重く、薄暗い。

 

そんな中、小さな折りたたみ傘を開いて最寄駅から職場へ向かう。

 

目の前には同じように冷たい雨に身を小さくして歩く勤め人達。

 

真っ黒なスーツに真っ黒な雨傘。

同じようなレインブーツに透明のビニール傘。

 

小学生は冬の朝でも楽しそうに傘をさしている。

パステルカラーの傘が上下に踊っている。

 

私の傘を見上げると、少しくたびれてはいるが、水色の小さな折りたたみ傘に、ウサギが遊んでいる。

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復職プログラムの実際

リワーク支援を実施している。

地域の精神科であるため、旧来より復職へ向けての援助は多い。

集団療法を活用しながら、クライエントに合わせた計画を組んでいく。

 

内容は軽作業を中心とし、認知機能への働きかけを目的とした活動内容となる。

ラクゼーションや余暇活動なども挟みながら復職となっていくという具合である。

 

期間はクライエントの状態と、企業の受け入れ態勢によって違うが、短くて2週間であり、最長2年の方もいらっしゃった。

平均すると3か月以内には復職されることが多い。

大々的にアナウンスをしているわけではないので、年間10名ほどの支援となる。

 

支援に乗れる方はしっかり復職される。

一方、リワークプログラムを策定したものの、参加されない方が2割ほど存在する。

簡単な話、このリワーク活動に参加できない方は、予後が悪い。

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