こんな夜には
夜の戸張が降り、街が静かになると、空気が湿ってくる夜がある。
実家に帰省し、少し夜の街を歩くとノスタルジックになる。
夜の匂いに色々な事が思い出される。
夜型の人間であったころ、喧騒から遠く離れた田舎の街で色々な人と出会い、色々な人と過ごした。
自転車で駆け回っていた宵闇は、やがて原付で走り回り、誰かを乗せて車で遠くまで行くようになった。
あの頃から随分歳をとった。
悲しいことも沢山あった。
美しい想い出が辛い記憶になる体験も何度も繰り返したように思う。
大人になって、少し火照った頬に夜風が涼しい。
変わりたい自分と、あの頃に戻りたい自分と。
それでも今私はここに居て、また明日も歩いていく。