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脳に栄養を

WAIS-Ⅲをどう解釈するか

<心理士向けの記事です>

 

質問や指導で多いのはWAISの解釈である。

所見が書けないという。

 

では、どのように所見を書くのか、そのエッセンスについて触れたい。

 WAISの実施自体は、その実誰でも出来る。

マニュアルに沿って実施すればいいのだ。

ということは、得点は誰にでも出せるわけだ。

職種の壁はない。

それどころか、診療報酬の定義の中に「心理技術者が行うこと」という文はどこにも見当たらない。

これは他の心理検査についても同様であるが、心理検査の実施に当たっては経験や知識は必要ないとされているのだ。

由々しき事態である。

投影法であれば、その解釈を巡って臨床心理が担当することが望ましいと私は思う。

我々は訓練を受けてきているのである。

アイデンティティという簡単な言葉では割り切れない、クライエントの最大限の利益の追求の結果である。

 

さて、では一般の心理所見を見てみる。

これがなかなかにひどいものである。

IQのみが提示され、ただのIQテストに成り下がっていることがある。

もしくは、ディスクレパンシー分析による結果が記述されている。

 

これは、解釈されていない以上、所見ではない。

 

点数のみ出したいのであれば、それは心理士が行う必要がない。

心理士に求められているのは、今後のクライエントの支援の糸口なのだ。

テスターとテスティーは心理用具を媒介しコミュニケーションを図っている。

そのコミュニケーションをないがしろにしてはいけない。

 

とはいったものの、さらなる解釈はどうしたらよいのか。

そこで、フラストレーションを感じてバイズを受けに来るわけだ。

 

参考図書もわからないと。

 

参考図書については、絶対的に信頼し、私自身所見に用いているものがある。

 

この一冊で事足りる。

 

WAISを解釈する手順も書いてある。

 

それでも足りない。

まず、IQを算出する。

群指数の評価、下位検査の評価を行う。

有意差がある項目は特に重点的に意識せねばならない。

ここまでは誰しも行っているだろうと信じたい。

わかるのは、本人の特徴である。

では、その特徴がどう影響するのか?

 

次に行うことは、特徴からクライエントを想起することだ。

得点の偏りはどのような人物を表しているのか、どんなところで困難を感じ、どのような所が得意なのか。

問題が起こっている原因はなぜなのか。

WAISの結果から推察し、根拠を固める。

 

最後に述べることは、今後の支援である。

どのようなことに向き不向きがあり、どのような点に気を付けたらよいのか。

伸ばした方がいいことは何であり、そのために何をするのか。

治療スタッフはどのような支援を行えばよいのか。

支援の際に気を付けることは何であるのか。

 

これらをしっかりとまとめ、所見を作成する。

本人へのフィードバックではどのように伝えていくのか考える。

 

検査結果としてIQを手渡すことに何ら意味はない。

本人が望んでいるのは、知能ではなく特徴と問題解決の方法なのだ。

 

公認心理士となった後、心理検査は公認心理士が行うことになるかもしれない。

いかにクライエントの状況や能力を分析し、解釈し報告するのか。

我々臨床心理士はアセスメントのプロである。

誰にでも出来ることではなく、専門性を活かした所見を作成することが、最も求められている役割であることを、肝に銘じなければならない。