おむえす

脳に栄養を

福祉と搾取

共同生活援助施設利用中のクライエントの診断書作成が回ってきた。

今般年金申請を行うとのことなのだが、主治医との関係性がとれておらず、年金申請の現症時診断書作成のための情報収集及び診断書作成ということであった。

予約が詰まっていたので、6時間後に再度来院してもらうこととし、一時間の面談枠を確保した。

診断書の作成用紙はお預かりしていたが、厚労省からのエクセルデータを用いて、面談しながら完成していく形をとった。

予定時刻30分前にご本人来院。施設職員が同行している。聴くところによると、初診時より常に同行し、代弁しているとのこと。

共同生活援助なので、グループホームと思うのだが、いわゆる福祉ホームから移行した同行援助が必要なクライエントなのかもしれないと予測し、場合によっては施設職員から情報収取を行う必要があるかもしれないと想定しておいた。

年金診断書には陳述者の氏名を記入する部分があるので、施設職員が陳述していただいても有効性は保証できるのである。

 さて、いざお会いすると、施設職員がやたらと高圧的でマウンティングである。

しかも、言っていることがズレている上に、情報の押し付けである。

肝心のクライエントは施設職員に圧倒されて何も言えないでいる。

幸いなことに、施設職員は度々中座し、突然診察室を出ていくので、その間にラポールを形成していく。

クライエントはしっかりと自発的に述べることができる方であった。

その施設は「行き場のない方をお預かり」するところだそうな。

どちらからお預かりするのかもわからないし、判断能力の無いクライエントを集めては生活保護の申請をし、施設が金銭管理をしているらしい。

その理由は本人が金銭管理能力がなく、全部使ってしまうからとのこと。

その是非はクライエントの幸福において判断がつかないためここでは述べることはできないが、高齢のクライエントに「〇〇ちゃん」と呼んでいる時点で、体のいい固定資産として取り扱っているように感じざるを得なかった。

 

では、このような施設職員の『代弁』にたいしてどう対処するのか。

もちろん、施設職員は「なるべく高い等級での年金」を望んでおり、本人の的確な情報を正確に陳述しているとは思えない。

しかし、頑張っている感はあるので、無下にはできない。

というわけで、適度に相槌を打ちつつ、本人の述べたい情報を少し待ってもらうことにする。要所要所で代弁者にも話を振ることを忘れてはならない。

もっとも、クライエントが中心であるので、最大限尊重するのはクライエントからの情報であり、施設職員は本人が満足してればそれで構わないのである。

本人の現症をクライエントに確認しつつ、補助的に施設職員にもお伺いする。

次第に高圧的な態度は薄れ、口数も減ってきた。

伝えたい情報を伝えられたと満足であろうし、初頭の会話のかみ合わなさの修正ができたのかもしれない。

 

こうして、クライエントは満足げに退室された。

できれば10年前まで有名企業で働いた経歴を持つクライエントが、福祉という名の暴力的な搾取から逃れ、自立した人生を歩んでほしいものだが、これまたクライエントの幸福と考えたときに、何が大切なのか大いに感じさせられる事例であった。