主夫の黒おでん(風)のススメ
抑うつ状態を主訴とするクライエントの話をお聴きしていたところ、ご主人の家事への協力がなく、孤独感を感じているということであった。
クライエントは専業主婦で、子どもの世話や家事を一手に引き受けているという。
ご主人は会社経営者であり、零細企業を運転しているため金銭管理にシビアな面を持ち、月々の生活費は支給制であった。
クライエントは自由がないままに不満を募らせ、夫婦間の諍いが絶えず、怒鳴られる日々を送っていたという。
ある日、全く家事に対する意欲が起きず、家事が手につかなくなり何もできなくなってしまい、カウンセリングを開始したのだ。
ご主人はカウンセリングへの同席はされず、離れた駐車場の車内で待機されていた。
クライエントの許可を取りご主人と話したところ、家計の食費や水道光熱費が高くやりくりができていないこと、幼少時のトラウマがあり家事をすることが我慢ならないことが確認できた。
クライエントは希死念慮があったため、現在の状態を受け入れてもらうことと病状の危険性を話し、少しだけでも家事を手伝ってもらうよう依頼したのである。
さて、主婦の皆様方からするとこのようなケースに驚くのではないだろうか。
そもそも「協力」などと言っている時点で、家事は女性の仕事であり、男性は補助的な役割と思っているように聞こえないだろうか。
私は兼業主夫である。
主夫業は楽しく、できる範囲で行っている。
できないことは仕方ないのだが、家内の雷が落ちることはホルモンバランスが崩れると起こる避けようのない恒例行事となっている。
特に楽しいのは料理である。
料理は認知機能の向上に抜群の効果を発揮する。
特に課題遂行機能を多く使うために、問題解決能力が向上し、本業にも役に立つのだ。
さらにすべての食事が楽しくなり、外食をしていてもどう作るのかや味の分析などできる。
今冬は息の長いおでんを作り、最終的に黒おでん風のおでんがコトコトと音を立てている。
主夫の皆様方におすすめしたいのは、おでんで一品稼ぐことである。
家族の好きな具が一つでもあれば食卓が豊かになるので、簡単で楽しいおでんの作り方をお知らせしたい。
おでんの基礎となる出汁は、好みによって選んでいただいて構わない。
・おでんの素
・和風だしを取る(削り節と昆布など)
・鍋の素を流用する
・鶏ガラだしを作る
今回は鶏ガラだしをおすすめしたい。
まず圧力鍋で鶏ガラを炊く。
なければ大きめの鍋でコトコトと灰汁を取りながらじっくりガラを煮込んでいく。
鶏ガラが柔らかくなってきたら、削り節を入れ強めに炊く。
鶏ガラと削り節を入れ、昆布を投入し沸騰しないように10分ほど煮る。
ここに甘口醤油と砂糖を少々入れて、少し辛めに味付けを作ればおでんだしの完成である。
あとは、お好みの具材を入れて、コトコト煮込むだけである。
朝晩火を入れておけば痛まない。
追加するときは、一旦具を取り出して濾すことが肝である。
出汁の追加は別鍋で和風出汁を作れば問題ない。
鶏手羽元やぶつ切りを入れれば鶏ガラおでんは継続する。
魚の干物を入れると一気に黒おでん風になっていく。
追加のたびに味に深みが増していく。
一品添えるだけで食卓は華やかになるので、試していただきたい。
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