一呼吸おいてからの一言がカウンセリングでは重要である
AI手法の進歩は目覚ましいものであり、今度は東京大学がてんかんの脳波を検出するAIを開発したという。
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/release_20190131.pdf
先日もAIのお知らせをしたのだが、医療が革新的に進歩していく予感である。
さて、今日のお話は「一呼吸入れる」ということである。
クライエントへの対応は、まさに「今ここで」の出来事である。
クライエントの訴えに対して適切な対応や、素早い判断を下す必要がある。
特に、医療機関においては症状であるかどうかの鑑別を即座に行いながら面接を展開していく。
例えばこのような事例を見てみよう。
主訴「最近熱っぽい」
クライエント「なんだが熱っぽくて、体がだるくて頭もボーッとしてます」
セラピスト 「今日も熱っぽいですか」
クライエント「はい。朝から熱っぽくて、呼吸もしづらい感じがします」
セラピスト 「測ってみましたか」
クライエント「朝は37.2℃でした」
セラピスト 「風邪かもしれませんね。インフルエンザも流行っていますので病院を受診されてみてください」
さて、何の問題もないこのやり取り、どこに改善点があるのだろうか。
「なんだか熱っぽい」という訴えの時点で、その熱に対しての扱いをどうするかが急務となる。
どのくらい続いているのかも確認したいし、実際何℃の発熱なのかも気がかりだ。
周りに感染者がいる可能性もあるし、熱発に対して治療を行っているのかも確認したい。
そこで、まずは「今も熱があるのか」を確認することにしたわけである。
この事例では、微熱が続いており、精神症状なのか身体疾患なのかを確認しながら判断していくこととなるだろう。
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さて、では最初の訴えの時に一呼吸いれてみよう。
「最近熱っぽい」という訴えをしている裏にはどのような気持ちがあるだろうか。
・セラピストに心配してほしい
・熱で辛いことを表現している
・辛いから早くセラピーを終えたい
・熱が続いていることを心配している
・言えない気持ちを「熱」ということで表現している
などイメージできることであろう。
何にせよ「熱が続いている」という心的事実があり、それを最初に訴えたということは、この熱に対して聞いてほしい気持ちがあるというわけである。
となると、最初の一言は「続いていますか」や「何度くらい」などの調査ではなく、労いや心配に対する保障を行うとよい。
つまり、「そんなに熱が続いているのでしたら心配でしたね」や「熱があるのに今日はよくいらしてくださいましたね」などの一言をまず口にするようにしてみよう。
その後に詳しく尋ねても、そこ数秒しか違いはないので安心してほしい。
その一言で何かが手遅れになることはない。
クライエントの苦労や心象に共感する一言を述べることが、その後のカウンセリングの展開にいい影響を及ぼす。
まずは、焦らずに一呼吸おいてから、情報収集を心がけるようにしよう。