誰かの口を使って語られるネガティブワードは本人の意見である
今の勤め先に就職したときより、病院長から10数年言われ続けていることがある。
「精神科医療は斜陽産業だ」
精神科バブルが終わり、医療費圧縮のために精神科診療報酬は減算されるであろうという、至極真っ当な意見である。
ところが、その実大幅な減算は無く、精神科クリニックが乱立することとなっている。
そして、ここ数年言われていることは、
「集団療法は世の中が必要としていない」
ということだ。
年末に「集団療法をさせてください」と願い出たばかりであるのに、昨日もこの話題に終始した。
人員体制を整えることも、私の外来診療日を増やすことも真っ向から否定された上での言である。
果たして集団療法を世の中が必要としていないのだろうか。
答えは明確であり、世の中の精神科デイケアなどの実情を見ると決してそうではないことが窺える。
福祉施設だけでは地域支援はカバーできないのである。
つまり、「世の中が集団療法を必要としていない」のではなく、「私(=病院長)が集団療法を必要としてない」ということだ。
このように、何かしらのネガティブワードを発するときに誰かの口を使って語られることは、往々にして起こっている。
例えば、
「○○ちゃんが、あなたのこと××って言っていたよ」
という、学生だけでなく社会人でも登場するネガティブワード。
これは○○ちゃんがどうかではなく、その本人がそう思っているから言っているのである。
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本人は間に挟むことで、自分への非難を避けるという意図が無意識的に働く。
そのため、同調意見を持つ誰かの主張とすることで、自分の意見を述べつつも個人の見解でないことが強調できると思っているのだ。
そもそも、そのネガティブワードを思っていないのであれば本人に伝える必要は皆無である。
なんなら、その場でその○○ちゃんに否定していただいて構わないのに、わざわざこちらに伝えるというとは、言外に自分もそう思っているということを伝えているのである。
否定的なことを聞いたときは、そのまま鵜呑みにするのではなく、言っている相手がそう思っているのだという意識を持つようにしよう。