メンタルヘルス・ファーストエイド
オーストラリアではメンタルヘルスに問題を抱える人に対して、一般市民が受講できる12時間の講習を行っている。
これはメンタルヘルス・ファーストエイドと呼ばれ、心の問題に対する応急処置となっている。
心理的危機が生じたときに、専門家にかかる前にどのような支援を行うか、どのように行動すべきかを示した非常に有効なツールと言える。
日本でも導入は進んでおり、メンタルヘルス・ファーストエイドの日本版が「こころの処置応急マニュアル」としてMental Helth First Aid Japan が普及・啓蒙を行っている。
こころの応急処置マニュアル | Mental Health First Aid Japan
福岡県北九州市では、九州大学との連携のもと、市民に対して広報しており、九州大学の加藤隆弘先生と岩手医科大学の大塚耕太郎教授らは職員に対する短時間のツールを開発し、パイロット研究で効果を得たと発表した。
こころの応急対応 (メンタルヘルス・ファーストエイド)の紹介 | 北九州市 いのちとこころの情報サイト
オーストラリアでの対応原則は次の5つである。
- 自傷・他害の評価(Assess Risk of Suicide or Harm)
- 判断や批判を加えずに傾聴(Listen Non-judgmentally)
- 安心と情報を提供し(Give Reassurance and Information)
- 適切な専門家支援を得るよう勧め(Encourage Person to Get Appropriate Professional Help)
- 自分で出来る対応法を勧める(Encourage Self-Help Strategies)
この頭文字をとって、(ALGEE)とまとめられている。
日本版においては(リハーサル)とまとめられ、
- リスク評価
- 判断(はんだん)・批判せずに話を聞く
- 安心(あんしん)と情報の提供
- サポートを得るよう勧める
- セルフヘルプを勧める
とされている。
具体的には、
1.自分を傷つける行為や衝動がないか。他者を傷つける行動や意思がないか。
「死んでしまいたい」「消えてしまいたい」という思いや言動はあるか。
そのような計画や経験がないのかを判断する。
2.じっくりと話を聞く。
良いや悪いの判断をすることなく、どのような気持ちであるのかを聞く。
責めたり決めつけたりせずに、自分の弱さや怠けからこうなっているのではないと理解する。
3.自分の責任なのではなく、病気によるものであることを考える。
医療が必要な状態であり、治療によって回復することを伝える。
同じように病気で苦しんでいる人もいて、自分が悪いからではないと知る。
4.心療内科や精神科の受診をすすめる。
ストレスが引き起こしたことかもしれないので、専門家の判断を仰ぐ。
苦しいままで過ごすのではなく、相談して心が軽くなる体験をする。
5.リラックスるための対処法を行う。
軽い運動や趣味などでリフレッシュしてみる。
相談できる仲間や信頼できる相手と話してみる。
この5点を心に留め、自分がメンタルヘルスの不調を感じた時や、周囲の人の心の健康が悪くなっていると感じた時には、応急処置を行う。
メンタルヘルスの問題は脳機能に影響を与えているため、応急処置が非常に重要である。
初期介入が早いほど回復も早い。
自分も周りの人も大切に思い、おかしいなと感じたら「リハーサル」を思い出し、声をかけるように心がけよう。
専門家に相談する前のメンタルヘルス・ファーストエイド:こころの応急処置マニュアル
- 作者: ベティーキッチナー,アンソニージョーム,メンタルヘルスファーストエイドジャパン
- 出版社/メーカー: 創元社
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