おむえす

脳に栄養を

催眠術は使えますかという質問へのお返事

心理の勉強をし始めたころから、時折尋ねられることがある。

このブログでもメールで質問があったので、私見を述べたいと思う。

その質問とは、

 

「催眠術は使えますか?」

 

である。

 

実は非常に難しい質問であり、内容によってはYESともNOともいえる。

 

なぜか。

 

まず、催眠術をイメージしてほしい。

ある程度のご年齢の方であれば、五円玉をひもに結んで目の前でユラユラと…

 

あなたはだんだん眠くなる…

 

というイメージが古典的にある。

これは、まあ条件によってできる。

というか、ある手続きを踏めばできる。

 

もしくは、一時期TVショーでやっていたような、パチンと指を鳴らすと寝てしまうような催眠術もあるだろう。

集団では難しいが、一対一ならできるかもしれない。

行ってみたことはないのだが、できそうである。

 

では、催眠術を使って、自分の利益になるように相手を動かしたり、セクシャルな使用ができるのかというと、それはできない。

もし、そのようにできるのであれば、それは催眠術というものにかかった人がそうなることを望んでいるのだといえる。

f:id:psycocoro:20181220095901j:plainPhoto by Johan Mouchet on Unsplash

 

さて、催眠術とはなんだろう。

一般的にイメージされる催眠術は魔法のように得体が知れず、思うままに操ることができるものである。

このような催眠術は使えないし、おそらくこの世に存在しない。

 

我々が用いるものは「催眠誘導」と呼ばれる技術である。

催眠誘導で重要なことは、本人の力を借りて行うことである。

適応疾患は、かつての神経症と呼ばれた疾患群であり、不安障害群や強迫症PTSD群や解離症群など脳機能の明らかな障害が存在するわけではない疾患に対して行うことができる。

 

医療現場で実際に行うことは少ない。

系統的脱感作法などにはそのエッセンスが必要となる場合もある。

 

さて、催眠誘導により催眠状態になるには、クライエントの協力が求められる。

催眠術のような魔法は現時点では確認されていないので、クライエントはセラピストの誘導に従い催眠状態へと入っていく。

この際に必要なのは「想像力」と「集中力」であり、催眠に入ろうとする姿勢が求められる。

催眠誘導をよく聞き、しっかりイメージし、自ら催眠状態へと入っていくのである。

 

このあたりでお気づきの方もいらっしゃると思うのだが、「催眠術」は「自己暗示」である。

クライエントの思いと異をなすことは実現しないため、先に述べたように思いのままに操られるということや、施術者に悪用されるということもない。

クライエントの想像力やそうなりたいと思う願いが無ければイメージはできないし、暗示にかかることもない。

ゾウを見たことが無い人に、催眠術というもので「ゾウになれ」と暗示をかけても、ゾウがわからないのでどうふるまえばいいのかわからないわけである。

 

クライエントは協力して、催眠状態になり自分の問題を克服していく。

これが本当は催眠術なのである。

 

催眠術は自己暗示なのであるのだが、セルフ自己暗示は訓練で簡単にできる。

もし、興味があれば、握りこぶしを作り、手が岩になって開かなくなるというイメージを持ってみよう。

そして、1から3まで数えて手をポンとたたいてみる。

気持ちの中に、開きたくないという感覚が浮かべばそれは成功である。

開こうとしてもことさらゆっくり開いたり、勢いよくパッと開いたりするのであれば、それも自己暗示が成功しているのである。

解除するときは、いつも以上に手も指も滑らかに動くということを想像して、今度は3から逆に1まで数えて手をポンとたたいてみよう。

すっきりと解けるはずである。

この時、心も楽になる感覚があったら、催眠状態に入っていたということである。

 

この自己暗示は様々なとこで役に立つ。

探し物をするとき、緊張をほぐすとき、気持ちを切り替えたい時などに使用できる。

詳しい内容はまた次回まとめていきたいと思う。

 

催眠術という魔法はないのだが、催眠術という自己暗示は存在する。

心理士は催眠術は使えないが、催眠誘導は使えるのである。