小さい子供に対しての家庭で行うSST
保育園や幼稚園の子共が園児同士のトラブルを起こして、園からの注意を受けることがある。
母親は心底悩み、時に涙を流す。
さて、このような時に子供に対して、どのようなしつけや反省を促したらいいのだろうか。
認知行動療法の一つにSSTが存在する。
SST(社会生活技能訓練)は、学習理論を基にしシェマの獲得を目指している。
①場面の設定、②問題解決、③ロールプレイ、④フィードバック、⑤リラン、⑥フィードバック、⑦ホームワーク、⑧報告といった順序で実施する。
集団で行ったほうが効果が高いのであるが、今回は一対一での過程で行うSSTを紹介したい。
まず、SSTについて詳しく見てみよう。
①場面の設定
どのような場面で困ったことが起こったのかをできる限り詳しく聞いて、同じ場面を設定する。
誰がどのように言ったかまで確認しておこう。
②問題解決
実際にその場面においてどのような行動が望ましいのかを考えよう。
解決案はいくつ挙げてもよく、注意しておくことは出た意見を否定しないことである。
③ロールプレイ
問題解決において選ばれた案を実際にやってみる。
①で設定した場面で②の問題解決技法をやってみるのである。
余計なことは加えずに、設定通りに行うようにしよう。
④フィードバック
まず、③のロールプレイにおいてどのような所がよかったのか「いいところ探し」を行う。
本人もやってみてどうだったのかの感想を述べるようにする。
そののち、改善点「もっとよくするには」という視点で望ましい行動を再設定する。
⑤リラン
もういちどロールプレイを行う。
⑥フィードバック
「いいところ探し」を再び行う。
④で新たな意見が追加された場合は、それを加えてどう変化したかの感想を本人に尋ねる。
⑦ホームワーク
宿題設定をする。
練習したことを実際場面で行えるよう、具体的に宿題ができる日を設定しておく。
⑧報告
宿題の実施状況について尋ねる。
もし、まだ機会がなかったり、うまく行動できなかったときは、もう一度ロールプレイを行う。
このような順序で行うことが基本であり、なるべくこの基本に忠実に再現していただきたい。
では実際どのようなSSTを園児に対して行ったか事例を見てみよう。
事例:つい興奮して暴力的行為を行うA君
A君はいつも落ち着きがなく、注意して聞くことが難しい園児である。ヒーローものが好きで、園では「たたかいごっこ」と称して友達とふざけているが、エスカレートし互いに気づ着けあうことがあった。
園での帰りの会でのこと。先生の話を聞かず隣に座っているB君と「たたかいごっこ」をしていた。その中で興奮しB君の顔をひっかいてしまって、B君は顔に傷がついた。B君が先生にA君の行為を報告したことにより発覚。保護者のお迎えの時に状況説明があったが、B君は帰宅しておりB君の保護者に謝罪することはできていない。
自宅でSSTを行う場面である。
保:今日は何があったのかA君から教えてくれるかな
A:わすれた
保:そっか、先生から聞いたけどB君をひっかいて傷をつけたんだよね
A:爪でしてない、指だった
保:そうなんだね。指で傷がついちゃったんだね。どうしてそんなことになったか教えてくれる。
(A君はソワソワして落ち着かないため、椅子に座ってもらっている)
A:わからん
保:何をしている時間だったのかな
A:帰りの会のとき
保:帰りの会の時にどうしてひっかいたの
A:たたかいごっこをしてたから
(落ち着かず周りをキョロキョロ、椅子からはみ出してしまう)
保:帰りの会のときは先生のお話聞いてたかな
A:うん
保:じゃあ、たたかいごっこはダメだよね
A:ダメ
保:まずは先生の話を聴こうね。いまもこっちを見てないよ。ちゃんと見てお話きけるかな
A:うん
(保護者と顔を合わせる)
保:上手にできたね。帰りの会のときにB君とたたかいごっこをしていて、顔を指で傷つけたんだね。
A:そう
保:その時どうしたらよかったかな
A:ごめんねする
保:そうだね。他にはどんな方法があるかな
A:わからん
保:たたかいごっこをしないっていう方法もあるね
A:うん
保:顔に攻撃したときはどんな気持ちだったのかな
A:よく覚えてない
保:そういうときはどうしたらいいかな
A:しんこきゅう
保:他にはどうしたらいいと思う
A:先生にいう
保:そうだね。先生の話を聞いておくといいかな
A:そう
保:今の中でどれができそう
A:ぜんぶ!
保:じゃあ、1個だけ練習しよう
A:やだ
保:まあ、そういわず。どれがいい?
A:先生の話を聞く
(帰りの会の場面を作る)
保:はい、じゃあいまからスタート。
(パチンと手をたたく。Aは椅子に座りソワソワしながら先生役を見ている)
保:今日はみなさんがんばりましたね。明日は寒くなるからあったかいお洋服を着て来てください。
A:はーい。せんせいさようなら、みなさんさようなら。
(パチンと手をたたき終わりの合図を出す)
保:ちゃんとできてたね!よく先生の顔を見てました。A君はやってみてどうだった。
A:せんせいの顔をみてた
保:すごいね!もっとよくするとこあるかな
A:ない
保:ソワソワしてるのがちょっとあったから、それもしないとすごくよくなるよ。今度はソワソワしないでやってみよう
(合図を出す)
保:今日はみなさんがんばりましたね。明日は寒くなるからあったかいお洋服を着て来てください。
(前回と同じ言葉を使う)
A:はい!せんせいさようなら、みなさんさようなら!
(合図を出す)
保:上手だったよ!さっきよりも元気にさようなら言えたね。さっきと比べてどうだった
A:うーん、できた!
保:そうだね、ソワソワせずに聞けていたね。じゃあ、明日これができるかな
A:できる!
保:先生に帰りに聞いてみるね。ちゃんと今日練習しましたってお手紙を書いておきます。
A:わかった!
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ー翌日お迎えの時
(練習内容を手紙に書いて、送迎時に先生に話しておいた)
保:今日はどうでしたか
先:今日はちゃんと座って聞いていました。
ー帰宅後
保:昨日言ってた帰りの会の練習、今日はできたかな
A:できたよ
保:教えてくれるかな
A:ちゃんと座って先生の方見てた
保:よくできたね!
このようにSSTが展開していく。
一回でうまくいくときもあれば、やはり宿題が出ないときや、うまく対処ができないときもある。
その場合は他の問題解決技法を選びなおして練習を繰り返そう。
反復することで、だんだんと望ましい行動が増えてくるようになる。
子供の特性にもよるのだが、一対一であれば注意を促すことが行いやすく、落ち着きのないと指摘される子供には効果が高い。
最近の教育現場では、個性の重視と言いつつも横並びになることが多い。
それは管理の問題であり、集団生活という観点から突出したり外れてしまわないように、同じ基準円の中に矯正される。
もし、あなたのお子さんが問題を起こしているといわれる子であったとしても心配しないでほしい。
「日本の教育には合わないかもしれない」
ぐらいに思っておこう。
ただし、誰かに迷惑を与えるような行為だけは、このように対処していく必要がある。
それは、矯正のためでなく、お子さんの今後の人生において役立つからだ。
誰かに迷惑をかけると、お子さん自身が悲しい気持ちになる状況に追い込まれるだろう。
そうならないように、なぜダメなのか、何をしたらよいのかをしっかりと話し合い、SSTを用いて望ましい行動(=)困らない行動を身に着けるようにしていこう。