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脳に栄養を

精神医療における公認心理師の展望と現状

精神医療の世界において公認心理士はどのような役割を担っていくのか。

 

現在の社会保障費を考えると、医療費の圧縮は止む無しである。

もちろん聖域とされていた精神医療にメスが入ることにもなっている。

医療は在宅へとのシフトが余儀なくされている昨今、社会情勢は医療から福祉へとシフトしていきたい。

しかし、障害者総合支援法における福祉サービスの欠点は、専門家の不在とバラマキ施策による不正受給を行う施設の急増と相成った。

また、医療は精神障害において欠かせないものである以上、脱医療となるのは難しいのではないだろうか。

 

非常に安定しているクライエントが、糖代謝の問題でジプレキサの使用ができなくなった。

そのため、代替薬へと変更したところ増悪してしまった。

ジプレキサはごく低用量で投薬していたのだが、代替薬を同じような機制を狙ってしようしたものの、当該クライエントには馴染まなかったのである。

新年より就労支援を開始する予定であったのだが、少し様子を見る必要が生じてしまった。

最終的にはルーランぶよって落ち着きを取り戻したのだが、二週間は薬効を注意して見ていかねばならない状態である。

 

このように、寛解状態となっていても薬剤により状態の変化が起こる。

また、ライフイベントや生活状況の変化による反応も多く、医療的な視点は欠かせない。

福祉施設ではこの最初の一手がどうしても遅れてしまう。

医療から福祉へとシフトしたのちに、増悪が見られるケースは少なくないのだ。

 

では、在宅が福祉でないとすれば、どのような医療支援が行えるのか。

ひとつは精神科訪問看護である。

看護師は病院から地域へとのシフト体制が整っている。

在宅医療を支える一環として訪問看護サービス事業所が存在する。

精神科も専門の訪問看護ステーションが数多くあり、在宅での医療的支援の一翼を担っている。

ここでの問題は、駆け出しのドル箱状態であったことだろうか。

非常に地域看護に熱をもつステーションがあれば、非常に営利主義のステーションもある。

病院への報告やクライエントからの報告、訪問看護ステーションの理念などを見ると、営利主義なのか看護的矜持があるのかは見えてくるものだ。

開所して数か月でペイできて、看護師の給与が700万前後となった創世期に乱立したのもうなづけるものだ。

熱意のあるステーションではクライエントの状態に合わせた看護計画をしっかりと策定してくれており、不思議とクライエントからの苦情も多い。

それだけ熱心でクライエントの生活を思っての言動があるのだろうと考え、クライエントのサポートしていく。

 

その他の在宅支援としては訪問診療になるのだろうか。

クライエントによっては外出困難であったり、コンプライアスが持てなく定期通院が難しい方がいる。

訪問して診療を行うことで状態の確認と適切な医療サービスの提供が行われるのだ。

オンラインよりも確実ではあるが、時間的なものと実施している医療機関が少ないことは問題である。

また、訪問が必要となるクライエント以外にも利用する方が多いため、真に必要な方への提供が難しくなることも考慮しておかねばならない。

f:id:psycocoro:20181205093515j:plainPhoto by rawpixel on Unsplash




現時点で心理職が医療で行っているものは、チームの一員としての加算体系に組み込まれているものと、心理査定である。

公認心理師の誕生により、心理技術者が公認心理師となっていくのであるが、注意しておきたいのは、心理査定の記載上に施行者の規定は無いことである。

つまりは、だれでも心理査定は行えるということだ。

系統的な学習をしたということで心理士が施行している医療機関がほとんどであるが、心理士でなければ実施できないというわけではない。

厚労省の見解によれば、公認心理師が新たな業務として登場する診療報酬は検討されていないという。

カウンセリングは診療報酬体系に組み込まれていないため、自費もしくは無償の医療サービスである。

 

話をまとめてみよう。

社会保障費の圧縮のために医療費は削減となる。

公認心理師の特別な報酬体系はない。

地域医療における公認心理士の活躍の場は存在していない。

 

医療界における公認心理の役割は、現在心理技術者が行っているチームでしか規定されないのである。

新たに資格を得るものとしては、メンタルヘルス実施者であるのだが、現実的にEAPに携わる方以外活用しようがない。

 

これからの医療制度を考えると、外来診療や入院医療は単価を下げたい。

そのためには医師の診療部分を分業してくこととなる。

精神療法を心理療法として公認心理士が行っていくことになるのではという希望的観測もあるのだが、認知療法ですら看護師と医師が行っている現状では、心理療法を行うのは看護師であろう。

ゆくゆくは地域における心理療法として展開していってほしいのであるが、何をするにも後手後手であり、あまた存在するカウンセリングルームが日の目を見る日は、まだまだ遠い。

医療現場ではじっと既存業務を行いながら、心理士会が力を発揮し、診療報酬体系への心理技術の報酬化や地域心理療法の展開への働きかけをしていくことが求められるのである。