自閉症スペクトラムの学生に対する援助で気を付けたいこと
自閉症スペクトラム障害の学生の相談は、どのような傾向があるだろうか。
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カウンセリングでは高校生が学校生活や学業の問題で相談に来る。
友人関係がうまく築けないことでの相談はアスペルガー症候群の女性が多い。
素行問題での相談が多いのは、アスペルガー症候群の男子学生である。
学業不振では男性が多く、ADHD傾向が高い。
限局性学習症(かつての学習障害)で相談に来られる高校生はほとんど出会わない。
大学生になると、主に学業不振が主訴となる男性のケースがほとんどである。
女性で進学問題を抱えている場合は別疾患であることが主である。
治療は主に心理検査を用いた症状の同定から始まり、知能検査を実施することとなる。
生活歴と合わせて診断が確定していく。
学校との連携が重要であり、クライエントの特徴を高校のスクールカウンセラーや大学のHDセンターと共有し、学生生活の支援を行っていく。
最近では大学のHDセンターの動きがよく、また、クライエントが修了できるよう手厚いサポートがつくようになってきた印象だ。
カウンセリングを行う場合は、認知行動療法が効果が高い。
実際場面を想定し、どのような問題解決を行うかを通して、認知の変容を目指す。
ブリーフケースになることが多いので、構成的に展開していかねばならない。
集団療法でリハビリを行うクライエントは休学していることが多く、復学に向けての支援を行う。
集団の中で社会性を再獲得し、ソーシャルスキルを高めることと、リズムよく日常を送るための支援が重要となる。
青年期の自閉症スペクトラム障害のクライエントに特徴的なのは、焦りが強いことである。
一事が万事といった思考パターンであるので、目下の問題がつまづいていることが、ひいては全人格の否定に繋がり、自尊感情の低下が著しい。
計画的や系統的にものごとを把握することが困難であり、優先順位をつけづらい。
そのため、独自の理論と方法で行動を起こしたり、提供する支援の拒絶が起こりやすい。
いったん軌道に乗ると、持ち前の能力が発揮され回復が早いことも特徴の一つである。
注意しておくことは、突然中断することだ。
情緒的交流が起こったとセラピストが感じていても、別次元で物事が起こっており、そのような情で治療関係が続くことはあまりない。
他に有益なものを見つけると、そちらに傾倒する。
治療場面では、共通言語がないということを念頭に置いておくことである。
一つ一つの言葉の理解は、こちらの意図しないものとなる可能性がある。
わかりやすく具体的に言葉を用いなければならない。
視覚優位であることは周知の通りなので、ワークシートや図説をいかに用いるか、重要な点は文字であらわすなどの工夫と配慮を行おう。
彼らにとって治療は一つの通過点にすぎず、治療終結後に挨拶に来ることはまれである。
終結時に感謝を述べられうことも少ない。
淡々と終結する。
セラピストはクライエントの社会復帰のためのひとつのツールであることも理解しながら、明確で具体的な支援を提供していくことに気を付けていこう。
自閉スペクトラム症の理解と支援 ―子どもから大人までの発達障害の臨床経験から―
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