予約時間を守れないクライエント
予約時間になってもクライエントが来所しない。
カウンセリング場面ではよく遭遇する。
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カウンセリングの展開期であり、中断の危機でもある。
遅刻の場合もあるし、無断キャンセルの場合もある。
大切なのは、このことをカウンセリングで取り上げることである。
クライエントから問題を取り上げるのか、カウンセラーが取り上げるのか、それによって大いに扱いが変化する。
セラピストは治療の中断を恐れる。
さらに無意識的には、クライエントからの脱価値化を恐れている。
自分が無能力であると突きつけられるのを避けたいのである。
そのため、話題から巧みに避けようとする行為が出現する。
クライエントから取り上げる場合は、一見合理的な理由が生じ、カウンセラーも安心を得ることができるため「仕方のなかったこと」と処理してしまうのだ。
確かに仕方の無いことはある。
重要なのは、どうして「仕方のなかったこと」が生じたかである。
クライエントは無意識に仕方の無い状況を作り出していると考えよう。
カウンセリングでない場面において同様のことが起こったら、不利益を被るのはクライエントである。
思考を巡らせ、クライエントが「仕方のなかったこと」を生じさせた意味について、話題にするようにしよう。
クライエントから話題にすることがなかった場合はどうか。
この時点でカウンセリングの時間や回数は減っており、不利益が生じているはずだ。
しかし、それを話題にしない、または話題にできないということは社会的にも問題があるうえ、重い意味を持っていると考えよう。
前述の「脱価値化を恐れるセラピスト」になってしまうと、このことを話題にすることがためらわれてしまい、今回来所したことの保障をして通常のカウンセリングを開始してしまう。
一見問題が収まったように思えるが、クライエントの言葉にならない訴えは無視されたことになり、その後のカウンセリング継続は困難になる。
問題として取り上げることにより、言語化を促し、カウンセラーは解釈を行う。
精神力動心理療法的接近であり、認知行動療法のスキーマ同定にも役立つ。
カウンセリングの予約に対する、遅刻や無断キャンセルは、カウンセリング中のクライエントの言葉や態度と同義である。
カウンセラーがしっかりと受け止め、取り扱って行くことで、クライエントの抱えている問題やカウンセリング場面で起こっている投影の解決へと繋がる。
脱価値化が起こっているのであれば、クライエントの不全感やカウンセラーへの期待について考察することができる。
カウンセリングの成功と失敗―失敗事例から学ぶ 個人・家族療法
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次回は、具体的な架空事例を紹介しようと思う。