公認心理士学習 1-3
集団療法の対象者が、この数カ月頑なで拒否的である。
プログラムには参加しない、声かけには否定的態度を取り、対人コミュニケーションが乏しくなっている。
1人で臥床しているか、離れたところで読書をしている。
先日、私のメンターである元上司にバイズを求めた。
何をしても変わろうとしないクライエントに辟易としていた。
あの手この手で関わっていたつもりであった。
「しません」「結構です」でコミュニケーションは阻害される。
そのような話を包み隠さず述べた。
バイザーの一言は的を射ており、私が目を背けていた事実に直面化させられた。
「そのクライエントからは怒りを感じるね」
私の中にあったモヤモヤがスッと崩れていた。
腑に落ちた。
クライエントは怒りを表出し、私はその怒りに感情的に巻き込まれており、クライエントを突き放していたのだ。
自己決定の原則と、クライエント主体を自分の言い訳として拡大解釈し、クライエントが孤立し行くことを止めなかったのだ。
このことにようやく目を向けることができ、クライエントへの軽作業から始める関わりを再開した。
作業を依頼する時に、私は緊張していた。
拒否されるのではないか。
いや、怖かったのだ。
私が拒否され、無力感を感じることが恐ろしかった。
今日まで感じていた気持ちは、私の自己愛が崩されることに対する恐れであったのだ。
断られることを想定して行う声かけは、自己愛が傷つかぬよう、断られるようにコミュニケーションを図っていた。
断ってくれることを望んでいた。
そうして、予定調和の世界の中でクライエントの問題として放置していたのだ。
今日、声をかけると、クライエントはすんなりと同意してくださった。
簡単なことだった。
この簡単なことが数カ月出来ず、クライエントを数カ月孤立化させていたのだ。
申し訳ない。
この事に気づくきっかけを作ってくれた実習生に感謝したい。
私の本心をありのままに、当たり前に表現してくれるメンターは、いつになっても追いつけない崇高な存在である。
さて、学習といこう。
1-3 公認心理士の法的義務及び倫理
1-3-1
法と職業倫理との違い
法は国家権力を背景に持ち、国家の強制力により法の規範が保証される。
職業倫理は集団の構成員間の構成員の行為について相互に規定し、問題解決の指針となる行動規範である。
職業倫理は命令倫理と理想追及倫理の二つのレベルが存在する。
心理職としての理想は、クライエントや社会の多くの人々の幸福・安寧、基本的人権の尊重である。
公認心理士は、その業務に記されているとおり、要心理支援者だけを対象とした援助を行うわけではない。
広く国民に心の健康を保持・増進させることが必要である。
そのための行動は倫理の下に責任をもち行わなければならない。
それは、互いの倫理規範によって制約と指針が設けられる。
このことが、職業アイデンティティであり、倫理綱領にそって自律せねばならないのである。
1-3-2
法的義務に違反した場合、罰則を受ける。
公私ともに倫理的に行動し、信用失墜行為を行ってはならない。
公認心理士として不適切な行為を行う場合には、公認心理士の社会的信用を地に落とすことに他ならないため、資格の取り消し処分が行われる。
そのた、重大な法律違反や、社会的影響のある犯罪・違法行為も罰則の対象であることを心に留めておこう。
1-3-3
職業倫理的な責任
- 他害をおこなわない、行わせない
- 知識や能力を培ったうえで健康と福祉に寄与し、研鑽に努める。能力の限界を知り、必要に応じてリファーする。
- 相手を利己的に利用しない。
- 一人ひとりの人格を尊重する。
- 秘密保持。クライエントの了承を必ず得る。
- 自己決定の原則
- 公平な態度で社会正義と公正・平等を体現する。
要心理支援者との多重関係を避ける。
多重関係とは、専門家としての役割以外の明確かつ意図的に行われた役割の両者の対場を持つことである。
利益誘導や性的関係が起こりやすく、非性的接触でなくとも多重関係は避ける。
つまりは、知り合いを対象にする場合には、極力別の支援者を紹介すべきである。
それは心理職と言う仕事が、相手の秘密を知り得る職であるとともに、場合によってはヒエラルキーが生成される危険性をはらんでいるというわけだ。
要心理支援者と支援者との間には、取り入りや見捨てられ不安など、性的接触に発展しやすい局面が多数存在する。
被愛妄想や妖精転移など、誘惑の多い職であることをしっかりと心に留め、倫理的に行動するように厳重に注意したい。
今日覚えること
命令倫理と理想追及倫理
クライエントや社会の多くの人々の幸福・安寧、基本的人権の尊重
公私ともに倫理的に行動し、信用失墜行為を行ってはならない
相手を利己的に利用しない
要心理支援者との多重関係を避ける