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ソクラテス式問答法でカウンセリングを展開する

ソクラテス式問答法はご存じだろうか。

 

ソクラテスといえば、哲学の祖として名高い。

かのプラトンの師である。

 

生きていく上では、「ソクラテス古代ギリシャの哲学の祖、無知の知」という三点だけ覚えておけば、対人関係や話題で困ることはない。

 

よりよく生きるためには、無知の知について知ることがよい。

それこそが、ソクラテス式問答法に繋がっていく。

 

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Photo by 张 学欢 on Unsplash

 無知の知

歴史的な逸話は興味がある方は調べてみてほしい。

こちらのサイトは簡潔に説明されているのでご一読されるといい。

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無知の知」とは文字通り、知らないということを知っているという意味だ。

 

矛盾の内容に意訳すると、「自分には知らないことがある、ということがわかっている」といえる。

 

小さい頃はみんな「どうちて坊や」なのである。

知らないことばかりで、貪欲に知ろうとする。

 

知らないから「どうして、どうして」と周りに尋ねるのである。

 

つまり、知らないということは恥じることではないのだ。

 

年齢を重ねるにつれ、知らないということに対して恥を覚える。

知らないということは許されないのだ。

もしくは、知ろうとしないということが生まれる。

知っているからと、その知を深めないこともある。

養老先生のおっしゃるバカの壁が出現し始めるのだ。

 私たちには未だ知らぬことが沢山あり、知らなくて当然なのだ。

 

知らないからこそ、知ることができ、考えることができる。

知らないということを自覚しよう。

これこそ、ソクラテスの述べる「無知の知」である。

 

 

ソクラテス式問答法

無知の知を手に入れると、ソクラテス式問答法が行える。

それも自然に。

知っていると思っていたことも新しいことになる。

相手の言っている真意は知らないのだから尋ねることになる。

そうして真理を見出すのである。

 

では、どのようにソクラテス式問答法は行われるのだろうか。

対話の中で展開することが多い。

 

命題:いい企業

相手 :いい企業で働きたい

あなた:いい企業って

相手 :給料が良くて、福利厚生が手厚いところだよ

あなた:条件がいいということ?

相手 :そりゃもちろん、条件悪いと働けないだろ!?それにやる気も出ない

あなた:やる気?何に対して?

相手 :そりゃ仕事だよ

あなた:どんな仕事なの?

相手 :そうだな、やりがいのある仕事だね

あなた:やりがいのある仕事か。どんな仕事だろう

相手 :うーん、やっぱり…ワクワクしたいよな!

あなた:ワクワクする仕事

相手 :そう!そしたら仕事に打ち込めるだろう

あなた:いい企業っていうのは、打ち込める仕事がある企業ってわけかな?

相手 :!!

 

となる。

もちろん、相手のパーソナリティによって展開は変化するのであるが、考えることができる相手であればこのように、共に考えていくことができる。

 

対等な立場であればたやすくできることであるが、上下関係になると難しい。

上司であれば、質問をすることが「自分で考えろ」と叱責される場合もある。

ということは、自分が部下に対して同じ思いを抱いていないだろうか。

相手が何を真意として発言しているのかは、尋ねなければわからない。

しっかりと対話して共通理解を持つことが大切なのだ。

 

 

カウンセリングにおけるソクラテス式問答法

カウンセリングではとても自然に、ソクラテス式問答法が展開される。

カウンセラーはクライエント(患者)に対していつも無知であり、知りたいと願っている。

クライエントは、カウンセラーの問いかけに答えながら、真理に近づいていくのだ。

 

ところが、疾病利得がある方や、人格障害発達障害の方ではうまく行かないこともある。

 

 

ソクラテス式問答法困難例にカウンセリングで対処するには

まず、疾病利得がある方は今の状態を動かしてほしくないという願いが強いのだ。

真理に近づくことなど求めていない。

自身の病状を確認してもらうことが重要なのである。

カウンセリングの主題は、「病気である私」として展開していくため、病気の主体と客体を変化させながら、本当に得たいものを自覚していくカウンセリングが望ましい。

 

次に、人格障害であれば、カウンセラーへの過剰な期待や抵抗感があらわになる。

知らないということは恥じであるということを投げかけてくる。

もしくは、体験から質問攻めにされていると感じ、強制する誰かを投影してしまう。

オーソドックスにカウンセリングの限界について説明し、尋ねることの意味について確認しあうことで、ソクラテス式問答法が展開されていくだろう。

 

最後に、発達障害である場合、共通言語ではないということを頭の片隅に入れておこう。

私の思う理論と、クライエントが考えている理論は同一ではない。

また、場面が限局されている場合も多い。

この時に起こるのは、クライエントよりもカウンセラーがハッとすることが多いのだ。

そのように感じ、そのように考えていたのかと得心する。

クライエントにとっては当然のことであるため、感じたことをカウンセラーが言葉にしよう。

クライエントは伝わらなさで社会的な障害を受けてしまっているのだ。

どのように伝わっていたかをはっきりと言葉や文字にして伝えることで、ソクラテス式問答法が効果を上げるのである。