苦しみを飲み込むカウンセリング
みなさんこんにちは
カウンセリングで何が起こっているのかと疑問に感じることがあると思います。
カウンセリングの目的は?
どうして効果があるの?
今回はカウンセリングで起こっていることの一つ、「飲み込む」ということについてお話ししたいと思います。
カウンセリングを受けるときは、心の悩みを抱えているときです。
心の悩みだけでなく、仕事上の悩みもあるでしょう。
カウンセリングでは、まず、感じている苦しみについて語ってもらいます。
あなたがどのような事に苦しんでいて、どうなりたいのかがとても重要なのです。
この苦しみが取り除ければすべてはうまく行くと思いますね。
苦しみを解消する方法はいくつもあるのですが、今回は「飲み込む」といった事について説明します。
専門用語を使うと「合理化」といった心の防衛反応を使います。
抱えている苦しみを納得のいくストーリーに置き換えるのです。
そうすることにより、解決しなかった問題が驚くほど簡単に消えてしまうことがあるのです。
具体的に症例を見てみましょう。
症例)A 男性40歳 デザイナー 未婚
主訴:吐き気が止まらない
状況:仕事上の重要な場面や会食のときなどに吐き気が出てしまい、そのような場面を避けてしまっている
カウンセリングの経過:
#1~#4(#は回数、カウンセラーはT)
Aー急に吐き気が起きるのです。
Tー緊張している感じはありますか。
A-緊張はしてますね。
T-いつごろから起こり始めましたか。
Aー転職してからでしょうか。もともと他県で働いていたのですが、女性関係がこじれてしまって、それで故郷に戻ってきました。重要な会議のときやコンペになると吐き気が起こるんです。
Tー緊張場面以外でも起こることはありますか。
Aースポーツクラブでも練習中に起こりますね。楽しいんですけど急になるんですよ。
T-そのようなときはどのような対処をされていますか。
A-生唾飲み込む感じです。でも、ひどいときはトイレに駆け込んで出してしまうとスッキリするんです。
T-緊張の度合いを数値に表してみましょう。
A-80~50といった感じでした。
T-少しは軽くなってきていますか。
Aーまあまあですね。我慢できるくらいにはなりました。
T-なかなか消えませんね。
A-急に起こるんですよね。
#5~#8
A-婚活してるんですよ。もういい歳ですからね。
Tー最初に吐き気が起こった時のこともう一度教えてもらえますか。
A-前の職場でお付き合いしていた人が、急に態度が変わってしまって、すごく許せなくてムカムカしたのが最初ですね。
T-もしかすると、吐き気と女性は関係があるのかもしれませんね。
A-スポーツクラブはそうかもしれません。今度食事に行くんですよ。
Tー吐き気の数値はどのくらいですか。
A-50くらいですね。
T-いいところを見せたい気持ちはありますか。
A-あっ、、、そうですね。そういう時は吐き気がしますね。数値は30です。
#9~#12
T-お付き合いされていた方はどうして急に態度が変わったと思いますか。
A-彼女が実家に帰ってた時なんですよ。地元で何かあったのかなと思うけど、それすら話さなくなって。
T-その方はご兄弟は。
A-姉がいますが、結婚して他県に住んでいましたね。
Tー実家にいつかは戻らなければいけない身。あなたのためを思って身を引かれたのかもしれませんね。
A-えっ、、、そうですね。そうかもしれないです。だって突然でした。きっと実家から何か言われたんでしょうね。私に言ってくれたらよかったのに。
T-あなたを傷つけたくなかったのでしょうか。
A-優しい人でしたから。
T-最近吐き気はどうですか。
A-そういえば感じてません。スポーツクラブの人とお付き合いすることになりそうです。
T-また必要になればカウンセリングにいらしてください。
※症例については個人情報に留意し、本人の同意を得て特定されないように改変されています。
この症例では、最初に「吐き気の改善」を目指して治療をすすめました。しかし、この方針では大きな変化はなく、吐き気による苦しみは続いていました。数値化することにより、思ったよりも吐き気が強くはないことが意識できたのですが、依然続いている状況でした。転機が訪れたのは、もう一度最初から情報確認をした時でした。現在困っていることは職務上での吐き気だったのですが、発生したのは女性問題であったのです。自分をよく見せたい思いが、うまく行かなかった過去の体験を想起し、自然と吐き気をもよおしていたのではないかと考えました。彼女との体験を納得できる形に認識していくことが、Aの治療には重要であると方針を変更しました。Aは納得できない体験を掘り下げたがらなかったため、Tが納得のできる形を提案しました。そうすることにより、自分の責任ではないと感じることができ、吐き気のことは忘れてしまったのです。つまり、納得のできなかった過去の体験を飲み込める形に変化することに成功したのです。
今回の症例は一例に過ぎませんが、問題に対する認知の枠組みを変えることにより、症状が消失することはよくあります。
もし、あなたが何らかの苦しみを抱えているときは、我慢ばかりせず専門家に相談してみましょう。